亮佑だって苦手な場所にいるんだ。

あたしだって頑張らなきゃ。

固まった足を無理矢理動かす。

すると少しずつだけど前に進んだ。


亮佑はそれを黙って見つめる。



時間をかけて亮佑の前まで辿り着くと顔を上げて深呼吸した。

「ほらっ大丈夫!」

今度は上手に笑えたかなと思っていると、腕を引かれ抱き締められた。

いきなりでびっくりしたけどやっぱり嬉しかった。


2年ぶりの亮佑の腕の中は変わらず落ち着く場所。

あたしは腕を亮佑の背中に回してギュッとした。

それに気付いた亮佑もギュッと返してくれた。


「……俺のこと、待っててくれた?」


耳元で亮佑のか細い声が聞こえた。

不安いっぱいなのが分かる。


あの時、待ってると言ったあたしに何も言わずに行ってしまった亮佑。


それって待ってて欲しいって思ってたってことだよね?



もし亮佑があたしの所に帰って来ても、あの時何も言わなかった亮佑に素直に待ってたなんて言いたくないと思ってた。


でもそんな不安そうに聞かれたら意地悪できないじゃん。


「当たり前でしょ。…おかえり」