そんなあたしを見た先輩は、安心したように微笑む。




「約束だからな。じゃ、俺行くわ」




あたしの頭をくしゃくしゃと撫でると、あたしの手を解いて屋上を去っていく。


その後ろ姿を、あたしは呆然としたまま眺めていた。



…あたし、先輩に言われちゃった。

あたしの為に気持ち込めて演奏するって、そう言われちゃった。




「―――うぅっ…」




顔を真っ赤にしたあたしは、鼻から赤い何かが吹き出て行くのが分かった。



そっか。これ鼻血だ。

先輩が居る時に、鼻血出さなくてよかった。



そんな事をぼんやりと考えている時に、本鈴のチャイムが学校中に鳴り響いていく。


チャイム音を気にしないまま物思いにふけっていたあたしが、午後の授業もサボって担任からドでかい雷を喰らった事は、誰にも秘密だけどね。




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