その日を境にバスで会う度話し掛けてくる。
「拓真君さぁ、1限何?」
「分かんねぇ。出ねぇし」
「出ないの!?」
「まだねみぃ」
「ちゃんと朝からいるんだから授業出ようよ」
「うぜぇ」
なんだかんだ言いながら返事を返してるってことは、俺はこいつと話すことが楽しいのかもしれない。
その証拠に最近はよくこの時間のバスに乗る。
学校が違うからこいつと会うのはこのバスの中だけ。
初めは本当にただウザイだけだった。
今じゃ苦手な朝も無理して起きてバスに乗る。
「お前さぁ、俺と話して何が楽しいわけ?」
「お前じゃない!亜美って呼んでって言ったじゃん!」
「お前だって君付けキモイからやめろっつったろ」
「分かった。もう君付けないからあたしも亜美って呼んで?」
「分かった、分かった」
「えへっ」
結局俺の質問には答えなかったけど。
こんなくだらない会話が楽しい。
「西高校前ー。」
「あ!じゃあね拓真君!…じゃあなかった。拓真!!」
「おう」
立ち上がり出口へ向かおうとする。
「亜美!」
名前を呼んだらびっくりした顔で振り向いた。
「また明日な」
「うん!!」
満面の笑みで手を振ってバスを降りていく。
そんな亜美に向かって見えるか見えないかくらいで手を挙げた。
1人が楽だったんだ。
今でもそれは変わらない。
でも、亜美は違う。
きっと俺は無邪気なあいつに恋をしたんだと思う。

