茉莉は、消えそうな声で答えた。


「ごめんなさい。」


ただ黙って抱き締めた俺の背中に茉莉の指が力なく添えられた。

あの日から、どんなに約束を破っても、茉莉は怒らなくなった。


「罰として、今夜の映画は寝ちゃ駄目だからね。感想文書いてもらいますぅ。」


なんておちゃらけて笑う。


「寝るね。自信あり。」


「もう、和巳のばぁか!」


舌をべ〜っと出し、げらげら笑って。


「顔色悪いよ?」


心配する茉莉を面倒くさがる俺に、


「私が可愛いく見えて丁度良いかもねぇ。」


鏡を覗き込んでポーズを決めた。

いつも、笑って。

それが当たり前だと思ってしまったのは、俺の勝手な都合。