【おばちゃんの話】
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その日は、朝から胸騒ぎがしてたのよぅ。

なんか、嫌な予感っていうか。

前もこんなことがあって、その時は、飼っていたスズムシが全滅したのよ。

夫の炊いたバルサンでね。
その時の夫とは、もう別れちゃったけどね。

今の夫は3度目なのよ。

おばちゃん、こう見えてもモテるんだからね。

ヒッヒッヒ。

そうそう。
でね、アタシはいつものように、ここで受け付けをしてたの。

そしたら、殺された彼女が一人でやって来てねぇ。

彼女、うちの常連さんなのよね。

何か商売してることは、見え見えだったけど、黙認しちゃってたのよねぇ。

今はきびしくしてるけどね。

彼女はいつものように部屋に一人で入ったのよう。

いつもは、それからしばらくして、男が来るのよね。

いわゆる、彼女の客がね。

日によって違ういろんな男がね。

それが、その日は来なかったの。

もしかしたら、アタシが見てない隙に誰か来たのかもしれないけど……

いえ、アタシがそんなミスを犯すはずがないわ……

でも、人間誰しも失敗はかならずするものだから……

いえ、アタシに限ってそんなことは……

とにかく、男は来なかったのよ。

来たのは、普通のカップルのみ。

一組、ゲイのカップルがいたから、普通ではないかしらね。

あとは、とにかく普通だったわ。

若いカップルに、不倫っぽいカップルに……

とにかく普通よ。

おばちゃん、顔までははっきり見てないから、声とか雰囲気で見てるんだけどね。

ま、だいたい間違えないと思うわ。