よく掃除されているが、どことなく薄汚れた印象を与える店内。

特徴のないデザインの椅子とテーブル。

色褪せたメニュー表がレジの上の高い位置に貼られている。

よくあるマイナーなファーストフード店の佇まいだ。


私の面接は、店内の隅のテーブルで行われた。


面接官は、店長の、吉井と名乗る男だった。

年は七十を過ぎたところだろうか。

見事な白髪に、白く長い顎髭をたくわえている。

人の良さそうな老人だ。


入れ歯の調子が悪いのだろうか。

非常に声が聞き取りにくい。


「週四回、入れるかい?」

ふがふが音を交えながら、そう質問する吉井店長に、私は「はい」と元気に答えた。


「元気が良くて非常に結構。飲食店は元気が基本。ファイト一発だ」


「はい」


面接は順調にすすんでいる。

採用は間違いない。

そう思って気がゆるんだ時だった。


「ところで、2号店には行ったことがあるかい?」


「……あ。はい」


全身の毛穴から汗がにじみ出るのを感じた。

顔が熱くなる。

何が感付かれたのかもしれない。そう思った。