12月24日。

クリスマスイブ。

街中にクリスマスソングが鳴り響き、幸せそうなカップルが、そこらじゅうから湧き出てくる。

私は、わざわざこんなめでたい日に、1時間に5本しか無いような、速度だけめちゃくちゃ早い電車に乗っていた。

一駅一駅の間隔が長いから、都会の電車よりも、かなり飛ばすらしい。


私が降り立った駅は、地味で無難な服を着た中高年と、センスの無いクリスマスツリーが目立つ、淋しい駅だった。

サンタの格好をした若者が、ヤマザキのクリスマスケーキを売っている。

「小さいほう、ひとつ下さい」

「ありがとうございます。三千円になります」

私は千円札を3枚渡して、ケーキを受け取った。


駅前のバス停には人がたくさん並んでいる。

もうすぐバスが来る頃なのかもしれない。

案の定、2分と経たないうちにバスは来た。

私はそれに乗り込み、『区役所前』という停留所で降りた。


バス停から区役所を背にまっすぐ。それから曲がり角を右に。

少し歩いたところにある水色の一軒家。

それが私の目的地だった。

ドアフォンを鳴らすと、すぐに扉が開いた。

「みどりちゃん、久しぶり」

扉を開けてくれたのは由美子さんだ。