そして、屯所だけじゃなかった。
もう一つ、別れを告げなければいけない。
「遥か?久しぶり。」
「総司。」
そう、もう1人告げなければいけない人。
総司の少し青い顔は変わらず。
変わったといえば前に会ったときよりやつれていたことだった。
「元気そうだな。」
「ありがと。総司はやつれたんじゃない?」
「かもな。」
「やっぱ遥は違ぇや。
俺に会う奴等はみんな“顔色がいい”だの“良くなってきたな”だの。目は笑ってねぇくせによ。」
「俺だって、わかってんだよ。もうよくなんてなってねぇこと。」
悔しそうに唇を噛んだ総司。
はっとアタシが居たことに気が付いて笑う。
「ははっ。久しぶりに会ったからつい弱音吐いちまった。忘れてくれ。」
「うん。」
「桜、綺麗だなぁ?」
「掃除の部屋は特等席だね。よく見える。」
総司の部屋から見る桜はとても大きくて、綺麗な花びらが少し強い風で舞っている。
ふわりとアタシのほうに舞ってきた桜。
総司がそれを優しく手にとる。
「綺麗だな。俺来年の春は見られるかな?」
「見られるよ。総司ならきっと。」
「本当?」
「本当。」
「生きられるよな。」と笑う。
とても別れを告げられない。

