「奈久留を放せ!」
死を覚悟した時だった。
そこには、息を切らせた雪夜がいたのだ。
「雪夜……っ」
(来てくれたんだ……)
嬉しさで涙が流れそうになる。
「もう一度言う。奈久留を放せ!」
その瞬間。
剣を抜いた雪夜が男に向かって剣を突き出す。
だが、男はすぐさまそれに反応し、雪夜の剣を止める。
そのお陰で、奈久留は男の剣から逃れられたものの、腰が抜けてしまい、その場に座り込んでしまった。
(情けないな、私……)
男に怯むことなく戦う雪夜をみて、奈久留は自分の無力さに呆れた。
(こいつっ……!)
男は顔を歪めた。
雪夜の剣に、少しずつ自分が押されていることに気が付いたからだ。
「ああ、やめだ」
男は雪夜と自分の実力の差を判断し、剣を手から放す。
「俺は自分の実力ぐらいは、ちゃんとわかっているつもりだからな」
「いい判断だ」
体を貫くような雪夜の視線が、男を見る。
「今日は、ひとまず退散させてもらうわ」
男は建物の上に飛び上がり、雪夜達から離れた。
そして、そのまま姿を消したのだった。
「うっ……!」
瀬梛が突然、うめき声を上げた。
瀬梛はファルコを手から放し、その場に倒れた。
「ちょっと! しっかりして!」
急いで駆け寄る雪夜と奈久留。
そんな二人を見て、瀬梛は呟いたのだった。
「瀬裡(せり)を……助けて」

