…何だか、凄く嫌な予感がする。

声がしたのは二人だけだけど、砂利を擦るような足音は…もっと沢山聞こえる。

『…悪いが、雑魚を相手にしている暇は無いんだ。』

土方さんが相手を挑発する様に言葉を紡ぐ。


『…オイオイ、雑魚かどうかは相手をしてみてから言って貰えるかい…!?』


−−−私が気付いた時には、土方さんと大柄な男が刀を交えて睨み合っていた。
大柄な男の動きを見ていると、土方さんではなく…雛を狙って切り掛かっているようだった。


尊王攘夷派…−


確か、外国人を排除したがる集団だって言ってた気がする…

雛も私も茶髪だし、私に到ってはこの時代には珍しい長身の女…雛なんて、現代でもたまにクォーターと言われるくらい目鼻立ちがハッキリしている。

…−勘違いされてるんだ、絶対。

『…来るよ。』

沖田さんの言葉に我に返ると、金属同士がぶつかる激しい音が響いた。
テレビで見るのよりもずっと冷たくて、耳が痛くなるような音…。

『…ぐぁッ…』

…ほんの一瞬の出来事だった。沖田さんが振った刀に切られ、男が道端に崩れ落ちたのだ。

『…口程でも無いね。』

向かい側でも、大柄な男が崩れ落ちた。

『…お前達の頭は、こんな程度なのか?』

土方さんが冷たい目を、浪士達に向ける。

残されたのは、リーダーに続けとばかりに暗闇から出てきた八人程の男達。

『…ぐ、うぉぉぉ!!』

その中の一人が、なりふり構わず切り掛かって来る。
しかし、土方さんはそんなのに憶する事無く刀を振るう。呆気なく、男はその場に倒れた。

『…これ以上、無駄な戦いをしたいのか?死にたいのなら、早く出て来い。』

土方さんの低い声が響く。
刀を構えた侭、残りの男達は微動だにしない。


『…そっちが来ないなら、こっちから行くけど?』

沖田さんがそう言った瞬間、

『ギェェェェ!!』

男の一人が奇声を上げて逃げて行った。それに釣られる様に、残りも物凄い勢いで姿を眩ませた。


『…ったく、武士の風上にも置けねェ奴らだ。頭が殺されて、悔しくないのか?』

土方さんが足元に倒れる大柄な男へと視線を向ける。