誰があげているのかは知らないけど、きっと土方さんか山崎さんだろう。

それに、土方さんには織さんのお墓参りを頼んでおいたし。


そう思いつつ、視線を右隣に移す。



「織さん。貴女の隣に、貴女の知らない人が眠ってるんです。知ってました…?」



最近、新しくお墓を建てた。

織さんの隣に。


一度も会ったことのない、あの人の。



「…山南さん、って……言うんですけどね…」



やっぱり、あの日に感じた優しさが怖いというのは、当たってしまったんだ――――…


土方さんと、屯所移転の件で、何かともめていたようで、いつになく仲が悪かった。

あの土方さんでも、頼りにしていた人だったのに。


―脱走を、したんだ。


あれは今からまだ日がそんなに経っていない、2月23日のことだった。


私は山南さんがいないと聞いて、すぐに馬で追いかけた。

近江国の大津まで、無我夢中で行った。


そうしたら、ある茶屋で休んでいるところに、ちょうど私が追いついたんだ。



『やぁ、沖田くん。遅かったね』



笑顔で、私に正面から言ったんだ。


どうしてこの人が脱走なんて……


今でも、その思いが胸の底から湧いてくる。