「廉が……」


再び、考えるよりも先に言葉を発していた。


言った後ですぐに目を見開いて、その意味を理解した途端に後悔したけど…


もう、遅い。


手を止めた廉は、不敵な笑みを浮かべながらあたしを真っ直ぐ見た。


「お前、俺の事好きなの?」


いきなりそんな事を言われて、目を丸くしたまま呆然としていた。


『お前、俺の事好きなの?』


廉の言葉が、頭の中で繰り返し響いている。


彼が、一体何を企んでるのかなんてわからない。


だけど…


もっと、廉に近付きたい。


もっと、彼の事を知りたい。


そんな事を考えながら、廉に少しずつ歩み寄った。


そして廉の前で立ち止まって、彼を真っ直ぐ見つめた。


廉の事をこんなにも真っ直ぐ見つめたのは、たぶん初めての事だった。