泣かない理由

片腕に買い物カゴを持ち、片腕に私を抱きかかえている蒼に、呆れた口調で言われた。

「空手習ってて強い筈なのに、こういうとこは変わらないよな」

少し低い蒼の体温と、自分のとは違うシャンプーの匂いにドキドキする。

心臓をなんとか宥めて、そっと蒼から離れる。

「ありがとう、でも鈍くさいは余計だよ」

私はぶーっと頬を膨らませた。