蒼は、私が傷つけられると、酷く取り乱す。

自分の傷では泣けない程に傷ついてしまった彼は、他人の痛みに、とても敏感になってしまっていた。

「まりがなくと、おれ、どうしていいかわからなくなる」

幼児退行してしまった蒼の頭を背伸びして撫でながら、ポケットから取り出したハンカチで、蒼の涙をふく。

「大丈夫、ちょっとやな思いしただけ。蒼に会って安心したの。もう、なんでも無いから」

私は靴を脱ぎ、部屋に上がった。

「ただいま、蒼。春とは言え、外は寒かったよ。あったかい紅茶が飲みたいな」

「うん、入れてくる」

真っ赤な目の蒼は素直に頷いて、台所へと向かった。