「ねぇねぇ」


ミホと話し込んでいると、クラス内でもムードメーカー的な存在の沙織が急に話し掛けてきた。


「二人は駅前のあれ、もう見た?」


「駅前のあれって何?」


あたし同様“あれ”の意味が分からない様子のミホは首を傾げながら聞き返す。


「1ヶ月限定らしいけど、19時になると駅前の時計台がライトアップされてすごい綺麗なんだって」


「へぇ……。未来知ってた?」


「ううん、全然知らない」


「えぇ~知らなかったのぉ?すごい有名だよ??しかも、それにはちょっとした噂があってね」


沙織はあたし達が知らなかったことに気をよくしてか、大袈裟にこう付け足した。



「男の人が好きな女の人をその場所に連れていくと、その女の人が幸せになれるんだって」



男の人が好きな女の人を連れていくと、女の人が幸せになれる?


それって……もしかして……


「へぇ〜知らなかった。ねぇ?……――って未来?どうしたの?」



あたしはミホの呼び掛けに何の反応もできず、口を手で押さえて呆然としていた。