Tirnis side
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 レガートと別れた後。王宮から少し離れたところに神々しくそびえ立つ、大聖堂へ足を運んだ。

 白い外壁に規則正しくならぶ薔薇(ばら)窓。はめこまれたステンドグラスは陽に照らされ色鮮やかな光のつぶを散りばめている。

 重厚な飾り扉をゆっくりと押し開けて中に入る。ギギィ……ときしむ音が大きく反響した。

 長イスが左右にズラッと列をなし、まんなかに広い通路。最奥の祭壇(さいだん)は、ちょうど一番大きなステンドグラスの光を浴びて薄暗い中にひときわ美しく輝いていた。

 聖なる乙女が祈りをささげたなら神の御使(みつか)いが舞い降りてきそうだ。

 まさか、こんな神聖な場所にまで、あの不良騎士を探しにきたわけではない。
 今日は『特別な用事』があった。

「これはティアニス王女様」

 名前を呼ばれたほうへ視線を移すと、左奥の扉からローブをまとったナイスミドルな男性が静かに現れた。

「そろそろいらっしゃるころだと思っておりました」

 鼻にかけたメガネを持ちあげ、キリッとした一重の目をやわらかに細めた。

 金のふちどりがある紫のローブには胸もとに聖なる光のシンボルが描かれている。帽子にも同じシンボル。権威の象徴である職杖(メイス)を持ち優雅にたたずむ姿は、この神聖な空間にふさわしい。

「私が来るってわかってたの? ラーファルト神官長」

「ええ。本日は──1の月、大地の日。アーウィング殿下のお誕生日でしょう?」

「覚えていてくれたのね」

「いいえ、はずかしながら。今朝リディア女王陛下にうかがったのですよ」

「そう……お母様に聞いたの……」

 視線を落としてつぶやいた。