「王女ティアニスが命じます! 陣形をといて全員攻撃に集中しなさい!!」

 シレネと壁になっている隊員たちが同時にふり向く。つづいて「その命令は承服しかねます」と小隊長がたしなめたが、こんな状況で黙っていられるわけがない。今の態勢がベストでないことくらい、実戦に慣れてない私にだってわかるんだから!

 自身の剣をぬいて天をつくようにかかげた。


「攻撃は最大の防御よ!!」


 力の限り張りあげた声が新月の闇に冴えわたる。

 一瞬の沈黙のあと──

「二番隊、陣形散開! 攻撃に回れ!!」

 小隊長の指示が飛んだ。はじかれたように円陣が四散する。

 出しゃばるのはここまでだ。きっともうすぐ一番隊が──リュートたちがもどってくる。護りながら戦うより、みんなで戦ったほうが、結果的に被害は少なくすむはず。

 私はせめてみんなが戦いに集中できるよう、自分に降りかかる火の粉くらいはらわないと!

 覚悟を決めて剣をかまえる。

「おねえさま!!」

 巨大な口がエサを丸呑みするかのように荒波が現れた!