Lute side
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 被災地・レグロアの町へ繋がる街道を、王女一行の馬車と俺たち親衛隊の馬が並ぶ。
 天気は良好、魔物の気配もなく、おだやかな道中が続いた昼下がり。先頭を行く馬からの伝聞(でんぶん)で一行の歩みは停止した。

 山間(さんかん)の道に、巨大な土砂の山ができていたのだ。

 昼休憩に立ち寄った中継の町では『行き止まりになっている』という情報はなかった。恐らく、数日前の雨で崖崩れを起こして間もないのだろう。

 御者は急いで地図を確認し、迂回(うかい)ルートを探す。

 だが、迂回していたらレグロアの町に到着するのは陽が落ち切った後になる。しかも視界の狭い山道(さんどう)になるため、夕闇の中を進むのは心許(こころもと)ない。

 整備された街道と違って魔物の遭遇(そうぐう)率も高まる。

 安全を第一に考え、中継の町へ戻って翌朝に迂回ルートを通ったほうがいいだろう、と結論づけた。

 到着が半日程度遅れることにティアニス王女はやや難色を示したが、共にいるエリーゼ姫を危険な目に遭わせたくない、と思い直したようだ。

 元来た道を戻ろうと馬をUターンさせたとき
──耳元で震える風。

「何か聞こえないか?」

 俺は(かたわ)らのレガートに問いかけた。