『ティアのことよろしく頼むわ』

 そうだ。
 騎士でありながら、彼は(つか)える国の王女を『ティア』と愛称で呼んでいた。ともすれば聞き流してしまうくらい自然で、当然のことのようだった。

(王族の親戚縁者(しんせきえんじゃ)か……?)

 だとしても正統な次期王位継承者をあのように呼び捨てるのは、よほど親密な関係でないと──……

(俺には関係ないことだ)

 答えの出ないことを考えあぐねるのは時間の無駄というもの。
 思考を無理やり遮断するため、再び寝台に横たわり目を閉じた。

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