Lute side
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「おはよう、グレイ隊長」

「ああ」

 騎士宿舎の廊下で。
 晴天の朝に相応しい爽やかな副隊長の挨拶をぶっきらぼうに返す。わりと見慣れた、いつもの光景。

 そのままいつも通り朝の鍛錬に向かうと、涼やかな声が少し慌てた口調で呼び止めた。

「ちょ、ちょっとどこ行くの?」

「どこって……鍛練場だが」

「今日はいつもと違うよ。こっち」

 鍛練場と逆方向の曲がり角を指差す。

「何かあったか?」

「君、若いのにボケてるの?」

「?」

「幹部集会で聞いただろ。今日は、合同訓練の日だよ」

『幹部集会』に『合同訓練』。
 騎士になって一ヶ月の俺には馴染みのない単語だが、聞いた覚えはあった。

「ああ、そうだったな」

「全く君は……」
「それでよく隊長が務まるよな」

 レガートの呆れ声とは別の刺々(とげとげ)しい声がかぶった。視線をやると──

 ……ああ、やはりな。

 赤髪と金茶の髪の二人組。少し離れた壁ぎわで、三白眼と垂れ目がこちらを睨み据えている。レガートの手前それ以上噛みつくことはなく、無言で横を通り過ぎていった。

 これもまあ、いつもの光景だ。

「気にすることないよ。彼らもいつかきっとわかってくれ──」
「別に気にしてない」

 励ましの言葉を一蹴。
 爽やかな二枚目が珍しく苦々しい顔になる。