「あ……ん……ちゃん」


あたしを呼ぶ咲さんの声も悲痛だ。




ソファーに置いていたバックとコートを掴み、逃げるように病室を出る。




『…身の程知らずのバカ女』


陸に抱きしめられた腕の中で、マリナが妖艶に口端を上げていたのには、気付かなかった。











バタバタと走り、病院で人気のない非常階段まで来た。


「ハァ…ッ……ハァ……ッ…」




誰もいないことを確認すると…その場にズルズルと座り込む。




「〜〜〜〜っ………うぅ……ふぇっ……ヒック……〜〜〜〜……」



堪えていた涙が、洪水のように溢れ出した。



「うぅ〜〜〜……陸〜……」


名前を呼んでも…あの人が戻って来るわけじゃないのに……。




あたしは泣きながら、何度も呼び続けた。