仮病を使い、教室を出る。



杏樹が居そうな場所は……


保健室


西棟


図書館


順に見て来たけど…居ない。


最後の屋上へ……

階段を上り、扉に手に掛けた時


「……っ……ヒクッ……ふぇっ……う゛ー……」



外から誰かの泣き声が聞こえた。



まさか………杏樹?




ガチャン……!


勢い良く開けて、外に出た。




少し離れたところで、背中を向けた杏樹を見つける。



「…………杏樹?」


呼び掛けると、ピクッと肩が動いた。


パッと顔を上げ、手で顔を拭う。



…………涙拭いたわね。



「なあに?柚莉。」


何事もなかったように、笑顔で私の方を向いた。



真っ赤に充血した目

赤い鼻

頬に残る涙の後……