酔いつぶれてボックス席に伸びている従業員の面々を見ながら、ふうっと長い息を吐く。 そろそろ家に帰らなければ。 一人暮らしの、誰もいないあの家へ。 二人で暮らす筈だったあの家へ。 朝のニュースを見ながら少しの睡眠をとり、これからは昼間も働くのだから。 まだ、唇に残る雅人さんの感触を手で拭うと、店を後にした。 愛の無いキスで気分が悪くなるのなら断ればいいのに。 いっそここに来なければいいのに……。