哀しくは、ない。


只…、
例の少年が見せる情景が、

我に『何か』を教える。

其れは、
我には無い物で、

持っていないはずの、

『中身』が…、

『赤い実』が、
遠くの草原で揺れている。




――鬼ごっこ。



「…何ですか?それ。」


「追いかけっこみたいなもの。追われる人と、追う人に別れるのよ。追う人が『鬼』なの。」

「…鬼、ですか?追って、どうするんですか?」


「捕まえるのよ?鬼に触れられれば、追われていたその人が今度は鬼なのよ?」


「…それで?」

「それだけよ?」


「本当に…?それだけじゃあ…永遠に終わらない遊びじゃないですか…」

「あら…本当ね?」



「「――やってみる?」」



少年と少女が、
きらきらと笑い合っていた。