そこから、どうにかこうにか聞き出したことによると、彼女の私服は全て施設の担当者が選んだ物らしい。

この部屋も、服も、
これじゃあまるで


「私は人形だから…。」


彼女は無表情のままに呟いた。

その瞳には、この部屋の玩具も、僕も映ってやしなかった。

「早乙女さんが、好きな物ってあるの?」
そう聞くと、
「無い。」
と短く返ってきた。

その時、やっと僕は理解した。
僕が今まで描いていたのはこの国が創ってしまった哀しいdollだったのだと。
僕が描きたいのは、お人形なんかじゃないと。