「先輩っ…!?」


「こうした方が、あったかい…。」


ゆっくりとそう言って、先輩は何事も無かったようにまた歩き出した。


「………。」


喉がゴクリと音を鳴らす。

先輩は、この状況で何とも思わないんだろうか??

そうだ。

先輩にとって、私はしょせん“いい人”にしかすぎないのだ。


「………っ」


唇にグッと、力が入るのが分かった。


「……鮎川?」


「へ……?」


俯かせていた顔を上げて見ると、先輩が手を握ったまま下から私の顔を覗いていた。


「な、何か顔についてますか??」


「いや、ついてはない…でも」


「泣きそうな顔してる。」と言って、先輩は握っていた手を離し私の頬をそれで覆った。