あの時は自分中心で
周りなんかひとつも気にしてなかった……

ナナという名前で生まれ
漢字でも平仮名でもなく片仮名でのナナ。

「ナナってたまにかっこいい事言うよね」

あたしの隣に居るのは水代由真。

「由真、それはお世辞?」

上履きが音を鳴らし、歩く。
左耳に甘い痛みをきらしながら。

「耳痛くないー?」

由真に言われあたしは耳たぶを触る。

「なんかちょっと熱い。
でも痛くはないよ」
甘い痛み。
決して、無意味なものじゃない。