そんな氷室さんから視線を壁の時計に移せば、ちょうど17時を告げる短い音が鳴って。


「…んじゃ、残念ながら今日はあたし、ちょっと用事があるのでそろそろ失礼しまーす。」


敬礼するような仕草をしてそう言えば、明らかに氷室さんの肩の力が抜けたのが見て取れた。


「うん、早くそうしてくれたらありがたいんだけど。」

「まったまたー。そういうこと言わないでくださいよー。…明日の朝、朝一番にまた会いに来まーす!」

「いや、もう来なくていいから。」


淡々と交わされる会話。
来なくていい、だなんて言葉はあたしには聞こえない。否、聞こえないのではなく、軽くスルーするわけで。


「ではまた明日ー。」


軽く手だけを振って、氷室さんの返事を聞く前にドアを閉める。
ドアの向こうではまた、氷室さんが疲れを吐き出すように、ため息をついたような気がした。