彼専用の机には誰も座っておらず、その机上には山のようになった書類。

あの彼が、仕事を放棄する訳なんて無い。ましてこんなに書類を溜めるなんてあり得ない。


「…氷室さーん。あたしでーす、加藤紫音でーす。かくれんぼなんてガラじゃないですから、出てきてくださーい。」


人の気配が全くしない生徒会室のど真ん中、我ながらバカだとは思うけれど。

氷室さんの姿が“ココ”にない現実を、ただ受け入れたくなくて。

もしかしたら隠れてるだけなんじゃないかと、楽観視してみたりして。

…だって、今までかつて、こんなことはなかったじゃない。

あたしがこのドアを開けたら、いつも呆れたようにあたしを見て、めんどくさそうにため息をもらして…

得体の知れない不安が、胸をかき乱した。