「……全く、しかたないね。」


盛大なため息のあと、そう、ぽつりとつぶやかれた一言に、小さく首を傾げた。

どういう意味かを問う前に、ふわっと宙に浮いた体。あまりにも軽々と抱き上げられたことに、さすがにびっくり…。

いや、びっくりもしたし、色んな想いもあるんだけれど、そろそろあたしも限界っぽい……。


「…今日は、放置しないんですね…。」

「いくら僕でも、病気の子を放っていくほど鬼畜じゃない。」


一歩一歩、進むたびに揺れる体。
伝わってくる氷室さんのぬくもりに、しだいに瞼が重くなる。


「そんなに調子悪そうだと、さすがに放っておけないでしょ。」

「氷室さん優しー…」

「…ねぇ。やっぱり、ココに捨てていってもいい?」

「や、です……」


優しい、心地よい声を聞きながら、あたしは意識を手放した。