でもそんなリアクション、もう見慣れちゃったから。


「聞きます、ってか聞いてます。
だから、あたしの愛をキャッチしてください。」


あたしは懲りずに言葉を紡ぐ。


「……押し売りはよくないよ。」

「売ってないです、フリーで捧げてるんです。」

「いや、本気で遠慮したいんだけど。」


本気で呆れられてるのは感じつつ、ここで引き下がるのも悔しいし。

軽く乱れてきた呼吸と、怠くなってきた足に気づかないフリして、必死に追いかける。

すると急に、氷室さんが足を止めた。
場所は広い生徒玄関。いつの間にか広がっていたオレンジ色が、玄関にも差し込んでいる。

…――あぁ、帰れってことですか。

振り向いた氷室さんの表情がそう言っているように見えて、ちょっと切なくなった。