恋せよ乙女


「私、ずっと信じたくなかったの。恭君が本当に誰かを好きになるなんて、思いたくもなかった。だからきっと加藤さんとの関係も、脆弱で儚くて。つつけばすぐに壊れるような、そんな関係であると期待してたし、そうであると信じてたのよ。」


夕闇がオレンジ色を侵食していく最中、ゆっくりと話し出した鈴木さんの表情には愁いが漂っていて。
あたしと氷室さん、二人を交互に見つめる瞳は、今にも泣き出しそうに揺らいでいた。


「……いつもことごとく無視されて軽くあしらわれる加藤さんを見て、いい気味だって思ってたの。付き合い出したと聞いたときも、全然実感なんて無くて。気づいたときには、早く私みたいにフラれちゃえばいいのにって、そう、願ってた。」


苦しい、辛い、悲しい、悔しい…
紡がれる言葉から、そんな鈴木さんの想いが、痛いほどに伝わって来る。