恋せよ乙女


心配そうに首を傾げる氷室さんに小さく頷き返し、二人の顔を交互に見ながら口を開く。


「鈴木さんの言う通り、あなたにされたこと全てを許せるかどうかはわからないけど。」


寒くて暗い資材置場に軟禁されて、渦巻く恐怖と不安に押し潰されそうになった。

わざとらしく見せ付けられたキスシーン、胸がえぐられたように痛んで、大きな衝撃を受けた。

揉めてあたしが階段から落ちたときだって、そのまま放置して階段を駆け降りて行った姿が、未だにまざまざと脳裏に浮かぶ。

思い出せば思い出すほどまだムカつくし、蘇る恐怖だって拭いきれないけれど。


「これから先、許そうと努力することならできるよ。」


例え今すぐ許せなくても、わかり合うことができなくても。鈴木さんが氷室さんのことを諦められないことも、あたしが譲る気なんて無いことも、そんなのお互いに承知済み。


「別にあたしも、いつまでも鈴木さんといがみ合っているつもりはないから。」


だからそう凛として言い放てば、呆れたように微笑みを浮かべた氷室さんの横、鈴木さんは何とも言えない表情を浮かべた。