失っていた記憶を、全て思い出して。
微妙にぎくしゃくしていた氷室さんとの関係も、とりあえず修復することができた。

でも、本当にとりあえず……。

何故かって、そんなのは考えるまでも無い。だって、あたし達の関係がぎくしゃくした根本的な原因、鈴木さんとのこじれは、何一つ解決していないのだから。


「……マジでお前、一人で行く訳?」

「うん、そうだけど。」


昨日、氷室さんと話した後、自分の家で未だ微かに散在していた記憶を整理した。自分の記憶であるのは確かだけれど、あの膨大な記憶を一気に思い出すと、さすがに混乱するのは否めない。

そんな中、自分の気持ち…というか覚悟を決めたあたしは今日、再び鈴木さんと向き合おうとしていたのだけれど。


「うん、そうだけど。じゃねーよ。お前の行動、少し軽率すぎやしねーか?何も、わざわざ一人で行く必要もねーだろ。」


放課後、玄関へ向かう道のり。
お節介…否、無駄に心配性を発揮する隼人が、あたしを引き止めて解放してくれない。

あたしは鈴木さんのクラスで、彼女と待ち合わせているってのに。