「――例え紫音が思い出さなくても、僕の気持ちは変わらない。だから今度は僕が、キミに振り向いてもらえるように努力するよ。
……そう、言おうと思ってたんだけど。」


あたしの大好きな、あたししか知らない笑顔が、あたしを見つめる。


「だから、紫音が謝る必要なんて少しも無いんだ。」


頬に触れる手が温かくて、優しくて。涙は余計に、止まらなくなった。


「……全く。僕を困らせて、そんなに楽しい?」


あたしに泣かれたら困る。
そんなのは知ってるし、困らせて楽しい訳じゃないけれど。

その、困ったような笑顔も好き。
戸惑うように、ぎこちなくあたしに触れるその手が好き。

もっともっと触れたくて、温もりを感じたくて。溢れ出る“好き”の気持ちを、押さえることなんてできなかった。