「…会長、加藤紫音です。開けて、いいですか?」


だからドア越しに、恐る恐るそう問い掛けてみる。拒否られたらどうしよう、そんな不安が渦巻く中、そんな心配などしなくていいとでも言うように、室内から「いいよ、どうぞ。」と、入室の許可がくだされた。

ドアノブを握り、心を落ち着ける為にふう、と小さく息を吐く。そして決意を固めるように強く頷き、ゆっくりとドアを開けた。


「……失礼します、氷室会長。今、少しお話いいですか?」

「うん。僕もちょうどキミと話したいと思ってたんだ。……ほら、いつまでもそんなとこに突っ立ってないで、早く中に入りなよ。」


開けたドアの向こう、すぐに視界に入ったのは、会長専用のモノなのであろう席につき、微かに笑みを浮かべた会長の姿。

彼は座っていた席から立ち上がるとソファーの方を指差す。そしてあたしに座るように促し、自らもその向かい側のソファーに腰掛けた。