「ごめん、紫音。今日、放課後に用事できちゃって、一緒に帰れなくなっちゃった。」


今朝、朝一番に世奈にそう言われたのが、原因と言えば原因だけど。


「お。加藤、ちょうどいいところにいた。」


一番の原因は、元凶でありえる担任に、いかにも暇そうに過ごしていた放課後のこのタイミングで、運悪く見つかってしまったことだろう。

「何ですか?」そう問う暇さえ与えられず、手にしていた大量の資料の三分の一ほど渡され、有無を言わさず資料室へ連行。

――そして。


「……よし。悪いが、この資料の整理、少し手伝ってくれ。学級役員に頼むはずだったのに、伝えるのを忘れていてな。」


苦笑混じりに紡がれた言葉に、今日は久しぶりに一人で帰るんだから、ぶらぶらと気ままにゆっくりと帰ろう。そう思っていたあたしの予定は、あまりにも簡単に打ち砕かれた。