「あたしも最近聞いたばかりなんだけど、一応アンタの耳にも入れておいた方がいいと思って……って、ほら紫音。こんなところにシワ寄せない。」


無意識のうちに寄ってしまったのであろうあたしの眉間のシワを指さしながら、世奈は言葉を続ける。


「噂には、尾鰭がついて回るものよ。」

「……火のないところに煙は立たず、って言うじゃない。」

「何、珍しくネガティブね。」


そりゃ、あたしだっていつもポジティブなわけじゃない。

とりあえず元気なのは取り柄だけれど、人並みに落ち込むし、人並みに傷つくわよ。

同じ委員会でいつも顔あわせて、仕事して、そんな二人の姿がリアルに想像できちゃうのが、余計あたしをマイナスに引き込んでいく。

一度引っかかったものは、そう簡単に外れてはくれないから。イヤな想像と最悪な結末が、あたしの中で勝手に成立していく。

これが事実かさえも、わからないのに。

…あー。マジでこんなに暗くなったのって久しぶりかもしれない。