欠落した記憶が寸分たりとも戻らないまま、何事もなかったように時間は過ぎていく。

でも、まるで習慣づいたように早めに登校したり、時間を持て余して仕方なく下校することから、あたしが何かを忘れていることは明白だった。

毎日、何か物足りない。

今までのあたしを満たしてくれていた何かが、今のあたしには無い。

恐らく…否、確実に、今のあたしにとって、何よりも大切なことを忘れてしまったのだ。

そして、世奈や隼人の態度、会長があたしに向ける視線から、忘れていることが会長に関わることだというのも、ある程度すると容易に予想がついた。

表には出さないけれど、思い出せない不安ともどかしさに、毎日押し潰されそうだった。