思わず、はぁっと小さく零れたため息。
悪態の一つでも吐いてやろうと世奈を見上げれば、聞き捨てならないワードがあたしの耳を通過する。


「氷室会長よ、ひ む ろ 会長。
知ってる人は少ないけど、紫音の大っ好きな会長さん、一年の時、現副会長とつき合ってたんだって。」

「……は?で、だから何?」


“つき合ってた”ってことは、今はつき合ってないってことでしょ?

氷室さんの名前が出て一瞬焦ってしまったけれど、過去のことなら全然、今のあたしには関係ない。


「何?じゃなくて。人の話は最後まで聞きな。…それでさ、氷室会長がフって二人は別れたらしいのよ。で、ここからが本題。そこまではいいんだけど、副会長はまだ諦めてなくて、虎視眈々とチャンスをうかがってるみたいよ。」

「…要するに、まだ氷室さんが好きってこと?」

「そ。まぁ、あ く ま で も、噂にすぎないけどね。」


そう、世奈の言う通りただの噂にすぎないけれど。

楽しそうに一緒に仕事している二人を思わず想像してしまい、ぎゅっと胸が締め付けられた。