刹那、微かな音が響いて病室のドアが開かれた。そして同時に、先生らしき人とお母さんが室内へと入ってくる。


「……悪いけど、僕はこの辺で帰るよ。」

「え、ああ。…つーか氷室、大丈夫か?」

「何が?……まぁ、さすがに今は大丈夫とは言えないけどね。」


隼人とそんな会話を交わし、切なげに微笑を浮かべた会長は、それ以降振り返ることもなくあたしに背を向ける。そして、お母さん達と入れ替わるように病室を出て行った。


「…――、幸い打撲やかすり傷程度で済んで良かったです。ですが頭を打ったようなので、2〜3日検査入院を――……」


傍らで交わされる、お母さんと先生の話なんてほとんど耳には入ってこない。部屋の隅で、隼人と世奈が顔を見合わせて何やら話していたけれど、それさえも気にならなかった。

ただ、最後に見えた会長のあの微笑が、脳裏に焼き付いて離れなかったから。