「……加藤、さん……?」


微かに聞こえた鈴木さんの声も、ズキンズキンと頭に響く鈍い痛みに掻き消されて。


「大丈夫……?」


次第に霞んでいく視界、遠ざかっていく意識の中、鈴木さんが恐る恐るとでもいうように、ゆっくりと階段を下りてくる。


「…ねえ、加藤さん……?」


――ああ、もう。
頭が痛い。響くから触らないでよ。

そうは思うのに、言葉にはならない。
餌を食べる金魚みたいに、ただ口がぱくぱくと動くだけ。

刹那、遠くなってきたあたしの耳に、微かな足音が届いた。未だ顔面蒼白な鈴木さんにも当然聞こえたようで、あたしの顔を覗き込んでいた彼女の顔に、明らかな焦りが浮かぶ。

そして、横たわるあたしを放置し、鈴木さんが階段を駆け降りる姿を見たのを最後に、あたしは意識を手放した。