恋せよ乙女


「次、ね……。今何時?」

「えーっと……、もうすぐ11時です。」

「そう。……なら紫音、ちょっと僕についてきて。」

「え?あぁ、はい。」


“僕についてきて”……?

ロール紙の箱を片手にゆっくりと足を進め出した氷室さんを、あたしは訳がわからないまま追いかける。

別に嫌だとか、そんなんじゃなくて。
ただ、さっきより若干早足の氷室さんに、少しだけ疑問を感じた。


「ちょ、待ってください。歩くの早いですってば。」

「…違うよ。キミが遅いだけだろ、紫音。ほら、おいていくよ。」


でも、呆れたように笑って振り向いた氷室さんの表情は、やっぱり普通で。さっきの急いてる感じと同様、あたしの気のせいだったと思うことにした。