「飽きるわけないじゃないですかー。
大っ好きな氷室さんに、誰よりも早く会えるんですよ?それに、ゆっくり話せる時間って、朝のこの時間か、放課後くらいしかないじゃないですかー。」


限られた時間で、一途に素直に自分の気持ちを表現するしかない。

だから、どんなに朝が苦手であろうとも、どんなに寝たのが遅かろうとも、氷室さんに会うためだけにあたしはこの時間に登校する。

楽しいとか、楽しくないとか、別にそういう問題じゃないんだよ、あたしにとっては。


「……あのさ、見てわかると思うけど、僕は今仕事中なんだよね。次の委員会までにはこの書類、全部に目を通して、生徒会の承認の判を押さなきゃいけない。いくら僕の話を無視する紫音でも、それくらいわかるよね?」


ええ、ええ。もちろんわかりますとも。
いくらあたしでも、ね。

だけどね氷室さん、あたしだって氷室さんのそばにいたいわけです。

だから、いつもより幾分鋭くなった氷室さんの瞳に気づかないフリをして、あたしは部屋の中央にある、ふかふかのソファに腰を下ろした。