「いや、それより氷室さん!あっついですって!体っ!」


そんなあたしの思考を引き戻したのは、背中から伝わってくる彼の体温。

それも、尋 常 じ ゃ な い く ら い 高 熱 の、ね。


「……帰らない、でよ。」


弱々しくつぶやかれる言葉、もはや噛み合わず成立してないその会話に、思わず笑みが零れる。

少し不謹慎だけど、ついさっきまで泣きそうだった気持ちが、嘘のように晴れ渡ってきた。

氷室さんの言動、ひとつひとつに左右されっぱなしのあたしもどうかと思うけれど、嬉しいものは嬉しい、悔しいものは悔しい、そういう考え方の何が悪い。


「ふふふ。わかりました。帰りませんから、氷室さんはあたしから離れて、とりあえずベッドに戻ってください。」

「……ん。」


わー、本当に素直ー。
びっくりするくらい素直に、ゆっくりとあたしから離れてくれた氷室さん。

ここまで素直だと、何だか逆に怖い。