「それで、直ぐに此処を発とうと思っているのですが、」


「ーどの国から行ったらいいのか分からないと」

「はい」


「……安全な道で行く方がいいだろうね。只でさえ、体が弱いのだから。ヴェルデ、地図を」

王が横にスッと手を差し出すと、再びヴェルデは短く返事をし、謁見の間を出て行く。


リグ王は、穏やかなだけではなく聡明でもあるようだ。
テキパキと此方がして欲しいように動いてくれる。
流石、若い内から国王に君臨しているだけはある。


「実は、ここの北西に大きな森があるのは知っているかい?」

「いえ、ほとんど家から出たことがありませんでしたから。……その森がどうかしたのですか?」


「……森は唯一、砂漠を越えずに他国へ行けるルートなんだ。但し、中はとても複雑に入り組んでいて道を知らない者は、たどり着くことはないだろう。おお、ちょうど良い、地図をこっちに」


タイミング良く、ヴェルデが地図を取りにいって帰ってきた。

三人で地図を取り囲むように覗き込む。実は、地図とやらを見るのはルーダーベにとって初めての事だった。



「これがー…地図」



紙に何やら書いてあるのは、多分この世界の全容なのだろう。
ごくわずかの人間しか知らぬー




「そう、これが世界の真実だ」