「なぁ、最近何かあった?」

いつもの帰り道、隣を歩くユウくんが心配気に、あたしの顔を覗きこんだ。


「ううん、何も。」

ブラウンの子犬みたいなユウくんの目を見て、あたしは笑顔で言った。



「嘘だ。
その膝の傷は?
歩き方もぎこちないし、

それになにより、顔色がよくない。」

「気のせいだってー

ねっ!
それよりさ、駅前にできたケーキ屋さん行ってみようよっ!」

あたしはあえて明るい声で言った。

本当はケーキなんて食べたくなかったし、
優しくするユウくんに何故か怒りを覚えていた。

最低なあたし。


「んー…」

まだ納得できないような表情のユウくんの腕を引いて、あたしは駅の方向へ足を進めた。