愛の楔




「どうせ、俺も一緒に出るから、気にするな」


恐らく自分のために車を出してもらうことに引け目を感じているのだろうが、感じる必要はない。
美空が必要だと言えばここの奴等はいくら入手困難なやつでもどうにかして手に入れてくるだろう。


「龍さん、お仕事?」

「あぁ、今日は遅くなる」


正確には今日も、だが。


美空は、そっか、とみそ汁を飲む。
その顔には僅かながら寂しさが漂っていた。
美空が寂しいと感じてくれたことに喜びを感じる反面そんな顔をさせてしまったことに胸が痛む。


「美空さん。護衛の二人には会いましたか?」

「ううん、まだ。名前は聞いたよ。和也さんと優斗さん。だったよね?」

「そうです。じゃあ先に顔合わせを済ませましょうか」