「自分の息子がこんなに馬鹿な奴だったとは………」
額に手をやって親父はなおも溜め息をついている。
馬鹿って失礼だな。俺は馬鹿じゃない。
「親父……」
「勝手にしろ」
親父はどこからか扇子を取り出したのか、扇子を開いたり閉じたり遊ばせながら呆れたように言う。
「親父」
「その代わり、ちゃんと護れよ」
裏の世界の人間じゃなく表の人間を引きずり込むんだから。何一つ身を守れない赤子同然のあの少女を
「………護るさ」
「なら、いい」
パシンッと扇子が閉じる音を合図に俺は立ち上がった。軽く頭を下げて踵をかえす。
「………ちゃんと、冷静にな」
「?」
襖に手を触れさせた時、親父が言葉を投げてきた。意味が分からず振り返るが、親父はひらひら憎たらしい笑みを浮かべながら手を振っていただけだった。


