愛の楔




しかし、それは一瞬で頭痛と共に無くなる。


「本当は、あたしずっと一緒に居たかったんだと思うの」

「………っ」

「時々溢れてくる感情は憎しみでも怒りでも悲しみでもなくって」


確かに憎しみも怒りも悲しみも感じなかった訳じゃなかった。それでもそれらを押し退けるように強い想いがあった。


「あたしは、龍さんが好きだよ」

「っ」

「記憶喪失になる前のあたしも、今のあたしも」


貴方の優しさに、温かな手に。


―――涙が出そうになった。
良い大人の、しかも厳ついヤクザの俺が不覚にも、泣きそうになるなんて。


ゆっくりと立ち上がって襖と向かい合わせになる。そして深呼吸をしてから、襖を開けると、白無垢姿の美空が立っていた。